眠り姫はひだまりで
でも大和は約束の時間になっても来なくて、心配になって電話をかけると、伝えられた、ご両親の離婚。
今家がドタバタしてるから、今日はいけない、ごめん、と。
大和が声を潜めているのがわかると、なんとなく察して、あまり自分から深くはきかなかった。
その数日後、大和はお母さんの旧姓である今の“佐伯”の苗字になった。
この前大和と喫茶店で再会したとき、なかなか大和の名前にピンとこなかったのは、多分そのせい。
大和は大和だけど、私には佐伯の苗字より、前の苗字の方が印象に残っていたんだ。
「うん。あれから母さんと二人で暮らしてたんだけどさ…夏に、母さんが、体壊したんだよ」
「えっ………」
大和のお母さんが…
「ずっと働きづめだったからね…。もともと無理して前の学校通わせてもらってたんだよ」
ほとんど学費免除頼りだったけどね、と大和は言う。
「でももう母さんが今まで通りに働けなくなったから、学費も払えないし、家賃も………それで、今の安いアパートに引っ越して来たんだ」