眠り姫はひだまりで


「なんかあった?大丈夫?」


私の目を見て、心配そうな顔をしてくれる。

…うう、優しさが身に染みるよ。


私はお弁当箱のなかに転がるタコさんウインナーを見つめて、「あのね」と言った。


「…私、中学の時から仲の良い男子がいてね?」

一応、大和の名前は伏せておく。

もしかしたら、純くんの耳にも、噂は届いているかもしれないけど。

話しはじめた私に、純くんは黙って聞いていてくれた。


「その男子が、私のこと好きなんじゃないかって、噂がたってるらしくて」

言葉にすると、なんだか陳腐なことのように感じた。

よくあること、かもしれない。

けど、大和だから。

大和だから、無視できないんだ。


「そのひと、すごく優しくてね。私も信頼してるし、気まずくなったりとか、したくなくて」

けど、でも…


「…そのひとが噂のこと知ってるかは、わかんないけど。私、気にしちゃって。変な態度、とっちゃった……」

じわじわと、目に涙が浮かんでくる。


< 395 / 587 >

この作品をシェア

pagetop