眠り姫はひだまりで


…見えたのは、不機嫌な顔をした王子様だった。


「純く………」


呼ぼうとして、声がでなくなる。

私の体は難なく持ち上げられ、いわゆるお姫様抱っこというやつをされた。

…あー、私、もう悔いはないわ。しんでいいかもしれない。


「……ふは、ありがと」


思っていた以上に弱々しい自分の声に驚きながら、笑ってみる。

彼は、益々顔を不機嫌に染めると、私を抱えて教室を出た。


教室を出たあと、女子たちの甲高い声が、嫌に響いた。

…また、なんか言われちゃうのかな。

佐伯くんの次は、って?

それは、困る。私はいいけど、純くんが、きっと困ってしまう。

なんて、そろそろ思考がおかしくなってきたのかなぁなんて思って、小さく笑う。

狭まった視界に映るのは、とっても素敵で意地悪な王子様。

「……ごめんね………」

こんなんでバテちゃう、私が嫌だ。

もとからしっかり寝過ぎるくらい寝て、食べる健康な体だから。

こんな風に、なにかに一生懸命取り組むなんてこと、しなかった。


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