眠り姫はひだまりで


純くん、と言おうとして口を開いたとき、彼の口も開かれた。


「…俺、先に行ってるから」


…えっ。

静かにそう言うと、純くんは私の横をすり抜けて廊下を歩いていく。

…う、うそ。

ちょ、ちょっと待って…!


「……純に、用なのかな?」


ぱっと朔くんを見ると、苦笑いを浮かべて私を見ていた。


「あ…えっと……うん」

「そっか。あいつ、今日なんか機嫌悪くてさ。ごめんね、今呼んでくるから」

…機嫌、悪くて…


「さっ…朔くん、待って!」

純くんの背中を追いかけようとした朔くんを、呼び止める。


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