あめ
「悔しがるだろうね、彼。
なにせ一番大事な部下を人質に取られてこんな格好にされてるんだから。」
「……我が主を、恨んでいるんですか」
「うん。
だって俺の恋人殺したんだもの」
「――…」
殺しが仕事、恨まれるのは仕方がない。
切り捨てた人間の中にはか弱い女も幼い子供も善意ある年寄もいた。
けれど容赦は許されない。
切れと命令された以上、彼らにとって標的はたかが獲物に成り下がる。
「帝国に反した彼女が悪いって?そんなの知ってるよ。
でも憎いんだよ。
子供の頃からずっと、ずっとずっとずーっと愛してたのに。
ああ、君たちには解らないよね、この底知れない絶望、苦しみも悲しみも、この胸を穿つ憎しみも恨みもすべて。
知らないから殺せるんだ、正義を騙る殺戮集団、どうせ人の感情を持っていない人形の集まりなんだろう。
だったら僕が教えてやるんだよ。
光を失った人間がどうなっていくか、その、光を奪うことで」