あめ
*
人殺しは悪いですか。
そんなの知りません。
正義だの美徳だの、それは世界に押しつけられた暗示でしかないのですから。
暗示によれば人殺しはいけないことです。
でも私は殺さなければならないのです。
それは
忘れたい過去を記憶の海に沈めるために。
けれど、そんな勝手な理由は罪悪感がありました。
だから私は考えるのをやめたのです。
自分で感情を持つのが痛くて痛くて怖くなりました。
だから
ええ、所詮は逃げ道でしかありません。
けれど彼はそれでもいいと言ってくれました。
私の感情すべてを引き受けて
私の生きる理由になってくれました。
だから私は尽くすのです。
それを愛と錯覚してまでも。