あめ



人殺しは悪いですか。


そんなの知りません。


正義だの美徳だの、それは世界に押しつけられた暗示でしかないのですから。



暗示によれば人殺しはいけないことです。



でも私は殺さなければならないのです。



それは


忘れたい過去を記憶の海に沈めるために。


けれど、そんな勝手な理由は罪悪感がありました。


だから私は考えるのをやめたのです。


自分で感情を持つのが痛くて痛くて怖くなりました。


だから

ええ、所詮は逃げ道でしかありません。



けれど彼はそれでもいいと言ってくれました。



私の感情すべてを引き受けて

私の生きる理由になってくれました。



だから私は尽くすのです。



それを愛と錯覚してまでも。



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