あめ



「ぎゃああああ!!」



けたたましい咆哮が白亜の建物全体に広がった。


女が閉じ込められているであろう奥の部屋に数人が向かう。



「どうした!」



扉を開けて、真っ先に血のにおいに目眩がした。

足元までいっぱいに広がる紅い液体は部屋の床一面を染め上げている。


元を辿れば、一体の人形めいた身体がごろりと転がっていた。



その光景を見てぞっとする。


鎖骨付近の肉が、喉が、無惨にも抉られていた。

ひゅー、ひゅーと僅かに呼吸の音がするあたり、まだ生きているらしい。



部屋の奥では、人質の女が澄ました顔して身なりを正していた。

黒スーツを固く着こなし、腰にはいつもの通り剣をさす。


髪を結び、襟を整え。



一通り済んだところで、入ってきた男たちに気付いた。



振り返った彼女の口元には、深紅の色を艶やかに帯びた液体が付着していた。



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