あめ
「ひぃぃっ!!」
狭い建物の中で逃げる恐怖感はただならぬものであったろう。
何処へ逃げるか、その判断力さえ投げ捨てて、ただ追い掛けてくる恐怖から遠くを目指す。
けれど目指した先では炎に焼かれあっという間に100人は生き絶えた。
「…ああ、主」
積みあがった残骸の上、穏やかに彼女は立っている。
表情はいつも通り。
怒りも嘆きも感じられない。
山から降りて、レインは彼女が主の元へ戻る。
「…すみません、たくさん汚してしまいました」
悪さをした犬のよう。
俯き加減に、垂れたイヌ耳が容易く想像できた。
「派手にやったな。」
「…はい。」
ふう、とため息をついて、ジンは紅にまみれた彼女の髪に手を伸ばした。
するとレインはすぐにそれを避ける。
「汚いですから…」
「触るなって?
冗談言うな、所有者が触ってなにが悪い」
「……、い、いえ、失礼しました」