あめ



再び指で髪を梳いた。


血は固まり始めて、指に張りついてくる。



「怪我はないのか」


「…あ、歯を一本折りました」


「歯?殴られたのか」


「拘束から逃れる際に男に噛み付きました」


「……また、大層な根性だな」




そうは言うものの、本当は押し倒された屈辱感や身体を触られた憎悪の方が大きかったりする。


何故かは知らないが、頭にきたなんてジンには言えなかったのだ。




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