あめ
抜いた剣がその首筋にあてがわれた。
それはもう動揺した顔をして、そいつは石のように固まっている。
レインは首に手を回した格好のまま、刃が食い込むまで剣を押しつけた。
「何のマネだ」
「それは此方のセリフです」
ジンの顔した何者かは、段々と息が荒くなる。
ばれるだなんて計算外だったのだろう。
「オープニングから展開が速すぎる気がしますがね。
その顔をすれば手を出さないと思いましたか、甘いですよ」
「……何故」
ギリッと唇を噛む。
「勉強不足です、間違いだらけですね。
主は気紛れではありますが濡れるのを嫌がるので雨の日に自ら移動する事はありません。
そして潔癖症の彼は書斎以外で私に抱き付くこともありませんし、飴をくわえていませんね。
それから、なんだか酒と煙草の匂いがしますが主は下戸ですし煙も嫌いです」
だからこその『煙なき炎』なんだろうが。