Love Prince―18歳の初恋―【完】
私は「案内します」と、杏奈さんを連れて、保健室を出た。

階段を登る途中、杏奈さんに声を掛けた。



「どうして、せ…癒杏の彼氏に言ってはダメなんですか?」



“先生”と言いそうになりながら、何となく気になった事を訊いた。

いくら彼氏でも、その前に担任だから。

杏奈さんは「お兄さんの事…」と言って、足を止めた。



「誰にも内緒よ?」



杏奈さんが私の耳元に口を寄せたと思えば、「空手のオリンピック候補のお祖父様譲りで、強いの」と言った。



「空手がですか?」



「ううん。お兄さんの場合、喧嘩よ。高校時代は、かなりの問題児だったみたい」



杏奈さんは「陵介の話ではね?」と付け足して、また足を進めた。
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