Love Prince―18歳の初恋―【完】
煙草に火を点け、やり場のない怒りを抑える。



「しばらく休ませます。癒杏、すぐ人に怯えちゃうから…」



杏奈ちゃんの提案に、俺は数回、頷いた。

母親は「1人にしないように、家(うち)で預かるから」と、杏奈ちゃんの肩を抱いた。

気掛かりな癒杏。

灰皿で煙草を揉み消し、陵介にコーヒーを頼む。

その瞬間、ドアを叩く音が聞こえた。



「癒杏…?」



杏奈ちゃんの声で、2階からの音だと確信。

「出して!」とも聴こえて、階段を上がり、自室のドアを開けた。



「…先生…」



視線を下げれば、涙を目にいっぱい溜めて、俺を見上げてる癒杏。

堪らず、キツく抱き締める。
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