月の骨

 歩きながら、僕は朔夜に仕事の成功を熱く語った。彼女は僕の話を黙って聞いてくれた。

 当時、僕の仕事は、月面探査衛星の開発だった。お金も時間も足りなかったから、僕はプログラムだけではなく、機体そのものの製作にも携わった。


 開発は成功し、あとは打ち上げを待つばかり、そういう時期だった。

 朔夜は僕の話を自分のことのように喜んで聞いてくれ、そしてこう言った。



「私をいつか、月まで連れて行ってね。」




< 101 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop