月の骨


 朔夜を跳ねた車の運転手は、斎藤という男だった。

 大手電気メーカーの社長で、政財界に対し強い影響力を持つ人物らしい。


 彼は朔夜を跳ねたあと、一度車を止めたが、そのまま走り去った。


 僕と、朔夜を残して。


 運転手は一度も車から降りることは無かったし、僕もかなり気が動転していた。


 けれども、一瞬だけ見えた彼の顔を、僕は一生忘れることはないだろう。





< 109 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop