月の骨




 隕石が特定の誰かに直撃する確率は、100億分の1らしい。



 誰が計算した値なのか、信憑性も怪しいものだったが、僕はそれに賭けるしかないようだ。


 会社を辞め、斎藤の家から少し離れたところにアパートを借りて引きこもった。


 斎藤は社長から会長になり、朔夜の事件の影響など微塵も感じられない。


 僕は大学時代に買った天体望遠鏡を覗き、斎藤と斎藤の家を見張った。


 そして夜は月を眺め、小惑星を探した。斎藤の頭上に落ちることを祈って。


 そういう生活を、五年間繰り返し続けた。





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