月の骨
「こうしているとね、二人で宇宙に浮いているみたい。」
僕の隣で朔夜が呟く。密着した体から、朔夜の体温と穏やかな鼓動が伝わってくる。
「地球だって、宇宙の中に浮かんでいるよ。だから僕らはいつも、宇宙に浮いている。」
「でも、私たちは地球の重力に縛られている。」
「そう。地球の重力から逃げ出すにはおよそ11.2km毎秒の初速度が必要だ。」
そう言って、毛布の下で、僕は朔夜の肩に腕を回す。
「第二宇宙速度ね。あまりロマンチックな響きではないかも。」