月の骨
僕が以前勤めていた会社では、大きなプロジェクトが進行していた。宇宙開発機構から請け負った、とても大きなプロジェクト。
それは、月面への無人探査機飛行だ。
月まで無人探査機を飛ばして、地表に降ろして、それからサンプルを採取して、また地球に戻すという壮大なプロジェクトだった。僕も、途中までそのプロジェクトに参加していた。
たが、前段の、プロジェクトの足がかりとなる月面探査衛星の成功が完了した時点で会社を辞めた。
もう、僕のやるべきことは終わっていたからだ。
それに二か月前、月面無人飛行プロジェクトは成功したと言っていたではないか。
「あれは、月軌道に乗せるのが成功したってだけだ」
どうやら僕は、あの時の電話で聞き流していたらしい。聞きたいとも思わない内容だったから、仕方ないが。
「頼む。これはお前だから話すことだ。まだプレスされていない内容なんだが、実は。」
山城は固く厳しい表情で告げた。
「原因不明のトラブルで、地球への帰還は絶望的だ。」