月の骨
30歳で、この家を買った。勿論、新築なんて買えないから、中古だ。朔夜と一緒にせっせと貯金をして、ローンも組んで、二人のための小さな家を買った。仕事も順調で、楽しかった。週末には山城を呼んで、庭でバーベキューもやった。
とにかく、あの頃が一番幸福で、満たされていた。
今空に浮かんでいる、あの丸い月みたいに。
でも、朔夜がいないこの家に、僕がいる理由は何もない。
それにこの家には、朔夜との思い出が多すぎる。
僕は仕事を辞めた後、アパートを借りて、ずっとそこで生活している。
毎晩そこで、天体望遠鏡を覘いているのだ。