月の骨


 斎藤の家は、住宅街のなかでもひときわ大きな家だった。石張りの門には、セキュリティ用の監視カメラが付いている。広そうな庭には、番犬もいるのだろう。いつだったか、ふざけて庭に忍び込んだ子供が、犬に噛まれて大騒ぎになっていた。侵入者には容赦ないように躾けられている、命令に忠実な犬なのだろう。

 子供の腕だったか脚だったかは、一応どうにか残っていたが、傷は一生残るかもしれないようだった。助け出されたとき、着ていた服は血で真っ赤に染まっていた。

 かわいそうだったけれど、僕にはどうすることもできなかった。


 僕は頭を左右に軽く振って、思考を切り替える。子供のはなしも、犬のはなしも、今は考えなくていい。



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