月の骨

 昔、二人でよく通った、おでん屋のことだろうか。


 おでんの味はうまかったし、酒も安かったし、女将さんも気立てのいい人だった。親父さんは頑固だったけれど。そういえば、気に入らない客が追い出されたことがあったな。

 行かなくなって、五年経つ。親父さんもいい歳だったし、もう、あの店は無いのかもしれない。


「やっぱりさ、お前と呑むと落ち着くわ。」


 ぼそり、と山城が言った。

 その顔は、もう真っ赤で明らかに酔いが回っていた。




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