月の骨
僕は咄嗟に玄関に向かい、扉を開け、彼を招き入れた。その動きは、とても速かったと思う。
彼を捕まえなければいけない。
なぜだか僕はそう思った。
彼に、朔夜の面影を見つけたからかもしれない。
短く刈られた白髪に、深く刻まれた皺。その奥の大きな黒目が朔夜を思い出させる。
玄関の扉を開けて彼と対面したとき、彼は些か驚いた表情で僕を見ていた。
後に彼から、僕が居ないものだと思い込んでいたから飛び出てきて驚いたと聞いた。
普段から家の様子を見に居ていたらしい。でも僕はほとんど家には居なかったから、お互いに会うこともなく今日まで来たのだ。