月の骨
「散らかっていますけど。」
そう前置きをして、僕は彼を家に招き入れた。
玄関には新聞が散らばり、薄く埃まで被っている。僕が仕事に復帰してからというもの、この家の中は荒れる一方だ。
僕は彼をリビングに通し、キッチンから買い置きの缶コーヒーを二本持ってきた。ソファに座る彼の前に二本とも置く。
「微糖か、ブラックしかありませんけど。」
種類が違うけれど、コーヒーはこの二本しかないので仕方がない。
彼は迷わず微糖をとり、僕は残ったブラックを取った。