月の骨


「私たちは、君とは違う。」

 彼は言う。

「私たちは、娘のいないこの世界で、それでも何かすがるものが欲しいんだ。」


 彼の言い分はわかる。


 僕は、朔夜の遺骨を全て灰にして、散骨した。

 朔夜の遺骨はもう僕のそばにはないし、墓も作らなかった。

 遺影も、位牌もない。

 それは全て僕の独断で行われ、その行為に対し、朔夜の両親は僕を責めた。


 それで構わなかった。


 朔夜の死はあまりにも突然で、あっけなく、僕の中では大きすぎた。




< 95 / 201 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop