VALEN-TINE
ゴクッ


「ん~ジュ~シ~そしてビタミンもたっぷり~」

ピーチジュースから伝わる、すごく甘い、あの果実の・・・
ん~それがたまらなく・・・

「お~いし~い!!」

いっつも道端で一人叫んでしまう。
でも、夕方で人もあんまりいないため、
一応振り返る人はそんなにいなかったり。
これ、逆にだめなのかなぁ。

そんなことを思いながら、とぼとぼ歩いて家に着いた。

「おかえり~ひなた」

「姉ちゃん、また桃かよ?」

「うん、また桃だけど?」

「ふっざけんなぁ~俺は嫌いだ、き・ら・い・だ!」

「知らないよ、あたしが買ってきたんだけど?」

言ってなかったけれど、哉多はピーチジュースが大嫌い。
“あのまろやかさとか・・・まじない!”
・・・それを好んでるあたしはどうなんのよ、
あたしはまるで“ない”のかよ!

クーッと唇をかみ締めると、ピーチジュースを持ったまま
2階に上った。
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