十五の石の物語
「レヴさん、ご無事でなによりです。」

「勝手な事をしてすまなかった。」

「こいつは良いタイミングだったな。
いろいろ話もあるだろうが、とりあえず、せっかくの料理が冷めないうちに食べとくれ!」

そう言うと、ミカエルはサリーとヴェールを食卓に就かせた。
サリーはしばらく不機嫌な顔をしていたが、ミカエルの料理を一口食べると、途端に驚いたような顔に変わり、そして他の料理を食べる毎にその顔はにこやかな笑顔に変わっていった。



「本当に、これ、おじいちゃんが作ったの?
ものすっごくおいしいね!」

「そうかい、そうかい。
足りなくなったらまだまだ作るからどんどん食べな!
でも、デザートもあるから、その分は空けときなよ!」

「えぇーっ!デザートも~?!
甘いものなんて久しぶりだよ!
大丈夫さ!甘いものは別腹だって言うからね。」



二人はやはり私のことを心配して町を探し回り、そして、運良くあのカフェでミカエルのことを知ってここに来たとの事だった。
私が心配をかけたせいで昨夜からまともに食べていなかったらしいが、それにしてもサリーの食欲はすごいものだった。
それとは逆に何にも手を付けないヴェールのことをミカエルはいぶかしく感じたようだ。



「あんた…何も食べてないようだが…口にあわないなら何か別のものが作ろうか?」

「あ…すみません。私はつい先程食べてきましたので…」

「そうは言っても、少し位……」

「ミカエルさん、彼はその……
……そう、厳格なベジタリアンなのです。」

私は咄嗟に言い繕い、愛想笑いを浮かべる。



「なるほどな。宗教的な問題かい?」

「……え、ええ…まぁ、そんなところです。」

「気の毒になぁ…野菜しか食えねぇとはなぁ…
野菜ばっかり食べてるから、あんた、なんだか顔色悪いぜ。」

「………は、はぁ……」

ヴェールは、顔を隠すように深く俯いた。



「……なんか悪いこと言っちまったかな?」

「いえ、別に、そういうわけでは……」

「あ、そうだ!」

気まずくなったその場の雰囲気を変えるために、私はいつもよりちょっと高めの声で話し始めた。

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