十五の石の物語
「君はお母上よりも人間の血が濃いのだし、また少しずつ普通の食事を食べるようにしてはどうだ?」

「……そうですね。」



本当にその気があるのかないのか……
ヴェールの返事はそんな曖昧な返事だった。



(何も食べずにすむのならそれでも良いかもしれないが、普通の人間として暮らすのなら、やはり食べられる方が何かと怪しまれることも少なくなるだろう。
そして何よりも食の愉しさを知っていた方が良いではないか。
いや、しかし、森の民の所で暮らすならそんなことは不必要なだけか……)

私がそんなもの思いに耽っているとサリーが不意に声をかけた。



「あ、ちょっとあそこで休んでいこうよ!」

サリーが指差した先には腰かけるのにちょうど良さそうな大きな石があったが、やけに陽が当たっている。



「あちらの方が良くはないか?」

私が木陰の方を指差したが、サリーは、ヴェールの日焼けのために陽の当たる場所の方が良いのだと意思を曲げない。

なるほど、そういうことか…と、私も納得し、サリーの言う通り、陽の当たる石に腰を降ろした。



「あっ!」

短い叫び声と共に、私はその場から飛びあがった。
石が陽に焼けて熱くなっていたのだ。



「もぅ~っ!本当にレヴは馬鹿なんだから!」

サリーは私が慌てて飛び退く様をみて大笑いをしている。
それにつられてヴェールまでが笑いを噛み殺して妙な顔をしていた。

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