十五の石の物語
店の少年に先程のペルシャ絨毯を持たせ、私は老人の店を目指した。



「こっちだ。」

私は、込み上げて来る笑いを噛み殺しながら俯いた。



(あの老人め…この絨毯を見たらどんな顔をするだろう…
さぞ、部屋に不釣り合いだろうな。
いや、これを敷けるような部屋等ないかもしれない…)

そんなことを考えると、さっき老人に笑われたことへの仕返しが出来たような気がして、腹の底から意地の悪い笑みが込み上げて来た。
我ながら、大人げないものだと思いつつも、私はどこか胸のすく想いを感じていた。



息を切らせながら懸命に私の後を着いてきていた少年の声が、私をそんな物思いから覚ました。



「レ、レヴ様…どちらへ行かれるつもり…なのですか?」

「もうすぐだ。」

「……しかし、レヴ様……そっちにはもう何も…」

あんな小さな店だ。
少年が知らないのも無理はない。



「あと少しだ!」

私は少年を励まし、ほどなくして、私達は市場の奥の拓けた場所に出た。



「あの荷物の奥に……」

私は例の店を指差した……つもりだったが、おかしなことにそこには何もなかった。



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