十五の石の物語
「レヴさん…本当にありがとうございます。
ずっと大切にします…」

「ヴェール…」

私には、特に深い意味などなかった。
ただ、少しヴェールを喜ばせてやりたかっただけのことだった。
だからこそ、ヴェールの反応には面食らった。

私は、今まで数えきれない程の贈り物をしてきた。
このカイヤナイトもけっこう良いものらしいが、こんなものよりもずっと良いものをいくつも贈ってきた。
だが、今までこれほどまでに喜ばれたこと等一度もなかった。
贈り物に涙を流してまで喜んでくれた人など一人もいなかったのだ。



「ありがとう、ヴェール…」

この旅を始めていろんな出会いがあった。
あの老人を探そうとしなければ出会うことのなかった人々との出会いが……



(考えてみれば本当に不思議な出会いだな。
そして、素晴らしい出会いだ……)




「そろそろ行こうか。」

私は心が温かくなるのを感じながら、二人に声をかけた。

この町を越えれば行商人の集まる町がある。
アランを探し、森の民のことを聞き出さなくてはならない。

私はヴェールのために何かしてやりたいという気持ちが以前よりも強くなっているのを感じた。



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