十五の石の物語




町を出てから随分と歩いたはずだが、行商人の町らしき所はなかなかみつからなかった。
行けども行けども、山と森ばかりが続く。



「ねぇ、ヴェール、本当にこっちで合ってるの?」

「ええ、この地図によるとこちらで間違いないはずですよ。」



結局、私達は、それから二晩も野宿する羽目になった。
そして、また大きな山を越えた所で、ようやく町らしきものが眼下に広がった。



「もしかしてあれなんじゃない?」

「そうだと思います。
きっとあそこです。」



あたりを山に囲まれた小さな町……

だが、少し中へ入るとその町は異常な程に活気付いていた。
皆、大きな荷物を担いだり、荷車を押してせわしなく往来している。
私達は、元締めの家を訊ねようと思うのだが、誰もが忙しそうにしていて話を聞いてくれそうな者がなかなかみつからない。
困り果てていたところに、ようやく店の前のベンチに腰掛けている一人の老人を発見する。
煙草の煙をくゆらせ、一服する老人に駆け寄り、私は声をかけた。
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