十五の石の物語
「俺はここの元締めのクレマンだ。よろしくな」

そういって陽にやけた分厚い片手を差し出した。



「アランのことを調べてるんだってな。」

「はい、こちらへお伺いすれば、アランさんの息子さんの手がかりがつかめると思いまして……」

「そんなことよりも、直接アランに会いに行った方が早いんじゃねぇか?」

「え?!でも、アランさんは早くに行商をやめられて、行方をご存知の方はいらっしゃらないのでは…?」

「そうさ、やめてからどうしてたのかはよくわからねぇんだがな。
何年か前…もう十年くらいにもなるかな。
ちょっと先の小さな町に宝石の店を出して夫婦で落ち着いて暮らしてるって話だったぜ。
あんな小さな町で宝石なんて買う奴がいるかどうかはわからねぇが、アランは昔から宝石…しかも、天然石が好きだったからな。」

その話を聞いた私の脳裏に悪い予感が走った…



「クレマンさん、まさかその宝石店っていうのはここから北へ山を3つほど越した所にある小さな町なのでは……」

「おや、知ってるのかい?
そうだとも。
背の高いかみさんと、その店を一緒にやってるはずだぜ。」



(……間違いない…
やはりあの店だ…
しかし、あの女主人は言っていた…

昨年、主人が亡くなった…と…)



それはつまり、南の森への手掛かりがなくなったということ…
私は、せっかく掴みかけていた手掛かりをあと少しの所で再び見失い、一瞬にして気が滅入るのを感じた。
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