十五の石の物語
「レヴ、どうしよう…
手掛りがなくなっちゃったね。」

「……そうだな…どうしたものか…」

「……戻りましょう。」

「え…?!」

今まで押し黙っていたヴェールの意外な一言に私は驚き、ヴェールの顔をみつめた。



「もしかしたら、アランさんの奥様が何かご存知かもしれませんよ。」

今までのヴェールとは明らかに違う力強い言葉に私はさらに驚かされた。
クレマンに言われた話を聞いて、ヴェールはまた心を痛めているのではないかと私は密かに心配していたのだが、そのヴェールがこんなことを言い出すなんて……私にはすぐには信じられない想いだった。



「そうだね!誰にも言ってないっていっても、さすがに奥さんには何か話してるかもしれないよね!」

「……そ、そうだな。」

「あ~っ…せっかくここまで来たのに、また山を越えて戻るのかぁ…
あ、そうだ!」

サリーはそういうとクレマンの所に走って何かを話し、そしてまたすぐに戻った。



「この先に、おいしいカフェがあるんだってさ!
そこで腹ごしらえしてから出発しようよ!」



サリーの提案通り、クレマンに教えてもらった店で腹を満たした私達はつい先程通ってきたばかりの道を再び後戻りする。
一度通った道だからか、来た時程は疲れを感じなかった。

私は、山道を歩きながらカフェでの光景を思い出していた。
ヴェールが何事もないように食事をしている姿を……
その光景は事情を知らない人が見れば、何の変哲もないごくありふれたものだが、私の目にはとても不思議な光景に映った。



(最近のヴェールは何かが変だ。)



変…というのは、以前と変わったということで、何もおかしなことをしているというわけではないのだが、以前のナーバスな彼とは明らかに何かが変わってきているのだ。
悪い変化ではないのだが、慣れていないせいか、そのことで私は奇妙な違和感を感じていた。



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