十五の石の物語
「いや…俺もあの場所には少し気になってることがあってな。
……たいしたことじゃないんだが、ずっと心の奥ににひっかかってる事があったのさ。
行こうと思えばいつだって行けたのに、ずっと先伸ばしにしてた。
いや、そのままでも良いかとも思ってたっていうのが本音だが、でも、時々思い出してな。
これも何かの縁ってもんだ!
案内させてもらうぜ!」

「そうなのですか。
どういう事情かわかりませんが、助かります。
では、どうぞよろしくお願いします。」

彼にも事情がありそうだ。
あまり頑なに断るのも却って不自然だと思い、私は彼の申し出を受けることにした。



「あ、あたしはサリー、こっちがヴェールでこっちがレヴだよ。」

「そうかい。
俺はフィリップ、よろしくな。」

「……フィリップさん…?!
もしかしたら、行商をされている…?」

「そうさ。だけど、なんでそのことを知ってるんだ?」

私達は行商人の町でのことを話した。



「そうだったのか。そりゃあ都合が良かったな。
実は今から帰る所だったんだが、特に急ぐ用はねぇ。
少し位後戻りしたって構やしねぇさ。」

フィリップは、クレマンや行商人の町の話をしてから、私達に殊更親近感のようを感じたようだ。



その晩、私達はその町に泊まり、次の朝、出発することになった。



「レヴさん…月がずいぶん丸くなってきましたね。」

「そうだな。採掘場に着く頃にはちょうど良い時期にあたるかもしれないな。」

「満月の夜、一体、何が起こるというのでしょうね。」

「さぁ、何なんだろうな…
焦らずともあと数日でわかることだ。
楽しみに待とうではないか…」

「……そうですね。」



ヴェールは私がベッドに入った後も、しばらく窓辺で月を眺めていた。
その横顔は、私にはどこか幸せそうなものに見えた。
おそらく、彼はもうすぐ出会う森の民のことを考えているのだろう。




(あと、少しだ……)
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