十五の石の物語
「せっかくみつけてもらったけど……俺…この石どうすりゃ良いんだろう?」

「何言ってんだよ!これからはあんたが大切に持ってりゃ良いじゃないか。
アベルがあんたのために持ってきてくれたんだから…」

「しかし、あいつは親父さんに黙って持ち出して来たんだぜ…
しかも、当の親父さんは亡くなってる……」

フィリップは、アランが亡くなっていたことに、大きな衝撃を受けた様子だった。
それは、おそらく、もうこのことを謝ることが出来ないという罪悪感のようなものからだろう。



「フィリップさん、この石がみつかったのも何か意味のあることではないでしょうか?
昔のことはともかく、これからあなたにその石を大切にしてもらえれば、アランさんはきっとお喜びになりますよ。」

「そうだろうか…」

「フィリップ、もしかしたらアランさんがここに導いてくれたのかもしれないよ。
俺の大切な石をこんな所に埋めたままにするなってさ。」

フィリップは、サリーのその言葉にはっとしたように目を見開いた。



「サリーの言う通りですよ。
もし気になられるのでしたら、アランさんの奥様の元をお訪ねになったらいかがです?」

「奥さんの居場所を知ってるのかい?」

「ええ、行商人の町からさほど遠くない所ですよ。」

「なんだって?そんな近くに…?
……俺、子供の頃に引っ越したんだ。
それからもずっとあいつとこの石のことが気になってた。
こっちにくればあいつに会えるんじゃないかと思っていたんだが、以前の家にはもう誰も住んじゃいなかった。
もう一度会いたかったんだ、アベルに……
でも、見つけ出せずに諦めてた。
まさか、こんな所で手掛りが掴めるとは思ってもみなかった……」

「相席のおかげだね!」

「本当だな。
あんたらと知り合えて、本当に良かったよ。」

「やっぱり、アランが引きあわせてくれたんだよ!」

フィリップは頷き、彼の顔から笑みがこぼれた。

緑色のその石も、フィリップとの久し振りの再会を喜んでいるような気がした。
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