十五の石の物語
「…すまなかった…
ここがあまりに居心地が良かったもので、すっかり忘れてた…」

私は言い繕うのをやめ、素直に謝る。



「わかりますよ、レヴさんの気持ち…
本当に素晴らしい場所ですね。
ここが……ここが『南の森』なのですね…」

「間違いないだろう…
もしも、そうでなければ、ここは天国かもしれないな。」

「天国ねぇ…確かにあんたなら、死ななくても天国に行けそうだよ…」

サリーの悪態はあえて聞き流した。



「今日はもう遅い…今夜はこのあたりで夜明かして、明日の朝、森の民を訪ねることにしよう。」

もう皆、休んでいるらしく見渡す限り灯り一つ見えない。

私達は適当にあたりに横になる。
妙に心を落ちつける草と花のにおいに包まれて、私達はそのまますぐに眠りに就いた…







やがて、夜が明けた。
起きたばかりだというのに、また眠くなるような心地良い陽射しが降り注ぐ中を少し進むと小さな泉があった。
冷たい水で顔を洗い、頭を目覚めさせる。



「とても良い水ですよ。」

透き通った泉の水をヴェールがすくい、おいしそうに飲む。



「あ、あそこには実がなってるよ!」

サリーが指差す先には緑色の小さな実がたわわに実っていた。
ヴェールは腕を伸ばし軽く飛びあがってその実を採ると、ぱくっとそのまま口の中に入れた。



「ヴェール!大丈夫なのかい?」

「サリーさん、私はずっと森の中で育ったんですよ。食べて良いものかどうかは、直感でわかるのです。
甘くておいしいですよ。」

そう言うと、ヴェールはまた飛びあがり実を取るとサリーにその実を手渡した。



「あ…!本当だ!すごく甘い!」

私もつい二人のやり取りが気になり、自分で実を採って口の中に放りこんだ。



「だめじゃないか、レヴはお坊っちゃまなんだから、洗わずに食べちゃ…!」

「そんなことばかり言っていると、採ってやらないぞ。」

「いいよ。ヴェールに採ってもらうから。」

ヴェールは私達のそんなのやりとりを見て、静かに微笑む。

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