十五の石の物語
大きな扉には何かの紋章らしきものが彫られあった。
集落の家に比べると、大きいだけではなく造りも格段にしっかりとしている。
「こんにちは。」
誰もいないとは思いながらも、一応、声をかけながら、私はゆっくりとドアを開ける。
入った途端にここも無人だということがすぐにわかった。
暖まった空気と、かび臭いにおい…
それらが誰もいないことを物語っていた。
「ここはお金持ちの家みたいだね!」
「金持ちというよりは、長のような身分の者の家ではないだろうか。」
部屋のあちらこちらに、ドアに彫られたのと同じ紋章があった。
家紋のようなものではないかと私は思った。
いくつか部屋を見てまわるうちに、私の前を歩いていたヴェールが不意に立ち止まった。
その身体が小刻みに震えていることに、私は気付いた。
「ヴェール、どうかしたのか?」
「あ…あれを…」
ヴェールが指差した先には美しい女性の絵が掛けられていた。
その絵を見て、私はヴェールの動揺の原因を瞬時に理解した。
(似ている……)
その女性は、ヴェールにとてもよく似ていた…
「もしや、この方は君の……」
ヴェールは絵から目を離さないままに、深くうなずいた。
「……そう…私の母です。」
「……やはり、そうか…」
ヴェールは女性の肖像画をみつめ、じっとその場にたたずんでいた。
まるでそれが生身の人間であるかのように、愛しさのこもった眼差しでヴェールはそれをずっとみつめ続けていた。
やがて、ヴェールは感極まったのか、彼の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
集落の家に比べると、大きいだけではなく造りも格段にしっかりとしている。
「こんにちは。」
誰もいないとは思いながらも、一応、声をかけながら、私はゆっくりとドアを開ける。
入った途端にここも無人だということがすぐにわかった。
暖まった空気と、かび臭いにおい…
それらが誰もいないことを物語っていた。
「ここはお金持ちの家みたいだね!」
「金持ちというよりは、長のような身分の者の家ではないだろうか。」
部屋のあちらこちらに、ドアに彫られたのと同じ紋章があった。
家紋のようなものではないかと私は思った。
いくつか部屋を見てまわるうちに、私の前を歩いていたヴェールが不意に立ち止まった。
その身体が小刻みに震えていることに、私は気付いた。
「ヴェール、どうかしたのか?」
「あ…あれを…」
ヴェールが指差した先には美しい女性の絵が掛けられていた。
その絵を見て、私はヴェールの動揺の原因を瞬時に理解した。
(似ている……)
その女性は、ヴェールにとてもよく似ていた…
「もしや、この方は君の……」
ヴェールは絵から目を離さないままに、深くうなずいた。
「……そう…私の母です。」
「……やはり、そうか…」
ヴェールは女性の肖像画をみつめ、じっとその場にたたずんでいた。
まるでそれが生身の人間であるかのように、愛しさのこもった眼差しでヴェールはそれをずっとみつめ続けていた。
やがて、ヴェールは感極まったのか、彼の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちた。