十五の石の物語
「しかし、なぜ、ここに母の絵が…」

「……おそらく…
ここは君の母上の生まれ育った生家なのではないだろうか…?」

「ここが…?」

私は黙って頷いた。
肖像画が飾られてあることを考えれば、そう考えるのが一番自然だ。
まるで関係のない他人の肖像画を飾る事は稀だ。



その時、サリーの大きな声が響いた。



「ちょっと、こっちに来て〜!」

サリーは、二つ先の小部屋から顔をのぞかせていた。
私達が駆け付けると、サリーは手に持っていた小箱を私達の前に差し出した。



「これ、見て!」

可憐な赤い花の模様が彫り込まれた小箱を開けると、中には石が一つ入っていた。



「この石は!!」

薄茶色の石には、十字の印が刻まれていた。



「これは、君のお父上が言われていたキャストライトではないのか!」

「そうです!きっと間違いありません!」

「そうか、キャストライトを探せという君の父上の遺言は、やはり森の民の所へ行けと言うことだったのだな…」

「そうだと思います…」

「君をひとりぼっちであの暗い森で暮らさせるのも不憫だし、かといって普通の人間達には馴染めるかどうか、君の父上は心配されたのだろう…
だから、キャストライトを探せと…森の民の所へ行けと言い遺されたのだろうな…」

「……そして、父の希望通り私はここにたどり着いた…
しかし、皮肉なことにここには誰もいなかった… …」

「皆、一体どこに行っちゃったんだろうね……」

途方に暮れた私達は長椅子に腰かけたまま、起き上がる気力さえ失っていた。



「レヴさん……
これからどうしましょう?

「そうだな…」

私にもすぐに思いつく言葉はなく、そのまま口ごもった。
彼を元気付けてやりたいとは思うのに、何も策が浮かばなかったのだ。



「私はこれからどうすべきなのでしょうか…?」



< 153 / 414 >

この作品をシェア

pagetop