十五の石の物語
ヴェールが気落ちするのも当然のことだ。
彼はここで森の民と暮らすと決めていたわけではない。
森の民に受け入れてもらえるかどうかもわからなかったのだから…
ただ、ここに来れば、仲間に会えると思っていた。
血の繋がりを感じられると思っていたのだ。
たとえ、森の民に拒絶されたとしても、ただ、その事を確認するだけで、自分は一人ではない…そんな気持ちになれると思っていた。
しかし、ここに来てわかったのは…まるで逆の事だったのだから。



「私はこの世界でたった一人の森の民なのかもしれない…」

ヴェールの漏らした言葉に私の胸は痛んだ。



「ヴェール…君が落胆する気持ちはよくわかる…
しかし、見たまえ!
この森はどこも荒れ果ててはいない…
もしも、なんらかの災害か事件があったのならが、集落ももっと壊れ、荒れ果てているはずだ。
私が思うに…彼等はなんらかの理由で住む場所を変えたのではないだろうか?」

「そうだね!きっとそうだよ!
ヴェールだって、家をあのままにして出てきたじゃん。
きっと、そんな風に森の民も違う所に移っただけなんだよ!」

「……確かに…何事かがあったような印象はありませんが…
本当にそうなのでしょうか?
彼等は別のどこかにいるのでしょうか?」

「もちろんだ
彼等はきっとどこか別の場所にいる!
私はそう信じている。」

「だけど、どこにいるかが全然わからないんだよね〜」



せっかく立ち直りかけたヴェールをサリーの一言がまた沈ませる。



「しかし…!それならまた探せば良いではないか。」

「そうだけどさぁ…手掛かりは何もないよ。」

再び、私達の間に重苦しい空気が流れた。



「君の母上は君にそっくりだな。
とてもお美しい方だ…」

私は重い空気を払いのけようと話題を変えた。



「そのようですね。
父がよく言っていました。
特に、母が亡くなってからは父は口癖のようにそう言っていました。
多分、私の中に母の面影を見ていたのでしょう…」

「その通りだろうな。
君の顔を見る度、お父上は懐かしい気持ちになれたんじゃないかな…」

「そうでしょうか…」

「そうだとも…」




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