十五の石の物語
湧き水が出たのが偶然であれどうであれ、あの水が身体に良かろうがどうであろうが、マリアにとってはまさしく幸せの水なのだ…
亡き夫との思い出がいっぱい詰まった幸せの水…
マリアの目に浮かんだ涙は悲しみの涙ではない。
嬉しさと感動と…そしてほんの少しの切なさの混じった涙だと思った。



「私もあの水のおかげでいろいろと救われました…
身体が回復しただけではなく、精神的になんだか強くなれたような気がするのです。
きっともう少しすれば…あ…いえ、なんでもないのです…
……とにかく、私もあの水には翡翠の不思議な力が込められていると信じていますわ。」

ジネットの瞳もマリアと同じように、温かな涙に濡れていた。



「……私も信じますよ。」

ヴェールがジネットに向かって大きく頷く。



「……しかし、そんな大切なものを無防備にあんな場所に置いておいて大丈夫なのですか?
あんなに大きな翡翠なら、宝石的価値も高いでしょう。
誰かに持っていかれたら大変ではないですか?」

「幸い、このあたりにはほとんど人も来ませんし、きっと主人がみつからないように守ってくれると思います。」

「なるほど……そうかもしれないですね…」

私はマリアのいつまでも変わらぬ夫への愛に胸が熱くなるのを感じた。
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