十五の石の物語
その日から、ジネットはあからさまにヴェールを避けるようになった。

サリーの身体もほぼ元通りに回復しており、ヴェールの気持ちを考えると早く発った方が良いだろうと私は考えた。

数日後、私達はついに出発することになった。



「マリアさん、本当にお世話になりました。
感謝致します。」

「いいえ。あなた方のおかげで私も楽しい日々を過ごさせてもらったわ。
またいつでも遊びに来てちょうだいね。」

サリーはマリアに抱きつき別れを惜しんでいる。



「……ジネットったら、一体どこへ行ってしまったのかしら…
今日あなた方が発つことはわかってるはずなのに…」

「ジネットさんにもどうぞよろしくお伝え下さい。」

「マリアさん、また来るから元気にしててね〜!」

「待ってるわよ!
あなた方も良い旅を……!」

マリアに手を振り、私達はまた森の民の情報を求めて新しい町へと歩き出した。
そこでみつからなければ、また別の町へ行くしかない。

もしかしたら、サリーが選んだこの方角ではない所に、森の民への手掛りがあったのかもしれない。
しかし、そんなことを考えていてはどこにも行けなくなってしまう。

ヴェールには辛い想いだけが残ったかもしれないが、こちらに向かったのも、きっと何か見えない力の導きなのだろう。
今はこの道を信じて進むだけだ。
この先に何があるのかは、行ってみなくてはわからないのだから…



***

儚く散ったヴェールの淡い初恋……
切ない想いを胸秘め、彼らの旅はこれからもなお続く……



翡翠〜fin.
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