十五の石の物語
今回の旅は特にこれといって大変なことは何もなく、私達は三日間の行程を思っていたよりも楽にこなした。
サリーの体調も完全に…いや、倒れる前よりも活力がみなぎっているかのように元気で、まだまだこんなもんじゃ物足りないとでも言いたげな様子だった。

私達はようやくマリアから聞いた町に着いた。
これといった特徴のない小さな町だ。
その晩、私達は、町に一軒しかない古いホテルに泊まることにした。



「あんまり綺麗とは言えないけど…久しぶりのベッドだ〜!」

「大袈裟だな。
たった三日ぶりではないか。」

「三日でも二日でも、あたしみたいなうら若き乙女にはやっぱり野宿よりベッドの方が良いんだよ!」

「うら若き乙女だと…?
どこだ?一体そんな者がどこにいるのだ?」

私は、そう言いながら狭い部屋の中をわざときょろきょろと見渡した。



「ここにいるだろう!!」

「ヴェール、いるのか?
ここに『うら若き乙女』とやらが…」

「さぁ…?
一体、どこにいるのでしょうね?」

「あんたら〜〜!!」

サリーの怒声に笑みがこぼれた。
私は、冗談が嫌いなわけではなかったが、サリーにはなぜだか今まで苛々するばかりで、冗談を言う気になれなかった。
そんな私の心境も、いつの間にか少しずつ変わってきたようだ。


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