十五の石の物語
「ジネット、おなかすいたわね。
何か食べましょう!」

ジネットはこくりとうなずいた。



「昨日から食べてないから、おなかがぺこぺこですわ…」

「私もよ。あ、あなたは座ってなさい。無理しちゃ駄目ですからね。」

ジネットは素直にうなずいた。

泣き過ぎたせいで顔が熱くて腫れぼったい。
マリアに気付かれないようにそっと外へ出ると、ジネットは川の水でざぶざぶと顔を洗った。
冷たい水がジネットの気持ちを晴れやかなものに変えた。

足はやはりまだ痛むものの、歩くのに支障があるほどではなかった。
怪我をしなかった方の足に重心をかけて歩けば、きっと水くみに行くのも大丈夫だろうとジネットは考えた。

家に戻ると、簡単な食事の用意が出来あがっていた。



「座ってなさいって言ったのに…!」

「すみません…」

「大丈夫だったの?」

「えぇ…」

「じゃ、いただきましょうか。」

温かいスープが軽くなったジネットの心の中に染み込んでいく。



「あらあら、さっきあんなに泣いたのに、まだ涙が残っていたのね。」

「このスープがあんまりおいしいからですわ。」

そう言って、ジネットは頬にこぼれた涙を拭った。

食事が済むと、マリアはいつものようにハーブティーを煎れた。
ほのかに甘酸っぱい香りが部屋の中に広がる。



「今日はいろんなことがあったわね…」

「マリアさん…私の話を聞いて下さいますか…」

マリアは黙ってうなずいた。
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