十五の石の物語
「伝説とはそういったものですわ。
私達は極力人間との接触を避けて来ましたから、そのために伝説のままでいられたのかもしれませんわ。」

「そうだったの……でも、それじゃあ、どうしてあなたはこの世界に出てきたの?」

「出てきたのは……私だけではありません…
それに出て来たくて出たわけではないのです。」

「なにかあったのね?」

「えぇ…
あることをきっかけに私達の住む森に異変が起こったのです。
そして、ついに長老は亡くなり、それと共に鉱山からまったく石が採れなくなったのです。」

「石?」

「そう…この石…」

ジネットは首から下げた小さな皮袋の中から薄茶色の石を出してマリアの前に差し出した。



「まぁ、とても変わった石ね!十字が入っているのね。」

「これは私達に伝わるお守り石なのです。
子供が生まれると両親は鉱山に入り、その子の幸せを祈りながらその子の波動にあった石を採ってくるのです。」

「じゃあ、森の民の人達は、皆、この石を持っているのね。」

「えぇ…でも、これは女性用のお守り石。
そしてこちらが男性用なのです。」

そういうとジネットは、もう1つの皮袋から違う石を取り出して見せた。



「まぁ!こっちはもっと変わってるわね!
十字が浮き出している……
これは誰かが彫ったものじゃなくて自然のものなの?」

「不思議な石でしょう?
こんなものが自然に作られるなんて、信じられませんわよね。
中でもこんなに綺麗なクロスになっているものはとても珍しいのです。」

「そうでしょうね…
見ているだけでもひきこまれそうな不思議な感触を感じるわ。
……でも、なぜあなたが男性用のこの石を?」

マリアは小首を傾げ、ジネットに質問した。
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