十五の石の物語
「ジネット…?」

「……すみません…大丈夫です…
父は長の側近でありましたが、それ以前に幼い頃からの友人だったそうです。
まるで兄弟のように仲良く育ち、大人になってからもその関係はずっと続きました。
長老の死を誰よりも悲しんだのは父でした…
父はなんとしても長の意思を継ぎ、この石を届けようと暗き森へ行ったのです。
……ですが、そこには誰もいなかったそうです。
もしかしたら、ご息女と共にご主人やお子様までもが亡くなられてしまったのかもしれない…
父は大きく落胆し、弱りきって森に帰ってきました。
そして、それからほどなくして…」

ジネットは話すうち次第にに涙声に変わり、そこまで話し終えると両手で顔を覆った。



「……ジネット…辛いことを思い出させてごめんなさいね。」

「……いえ…私がお話すると言ったのですから……」

「……大丈夫?」

マリアはジネットの肩を抱き、ジネットのグラスに幸せの水を注いだ。
ジネットは一気にグラスの水を飲み干すと、一息入れてからまた話を続けた。



「私は亡き父に代わり、なんとしてもこの石を届けたいと思いました。
しかし、どこをどう探せば良いのやら…
それよりも、その方が生きてらっしゃるのかどうかさえわからないのです。
私はまず暗き森の近くへ行ってみました。
そのあたりで、この森には『案内人』と呼ばれる男性がいたという話を聞きました。
きっとその方に違いない!
新しい森の長は生きてらっしゃった!
天にも昇る思いでした。
……しかし、それから先の手がかりがまるでつかめなかったのです。
いろいろな所を探しまわりました。
ですが、なに一つ手がかりはみつからなかったのです。
私は疲れ果て、いつのまにか南の森に帰ってきていました。
何一つ変わらないように見えるその森には今はもう誰もいません。
見える景色は私の記憶と同じなのに…
でも、もうここには誰もいない…
私は居たたまれなくなって森を出ました…
そして、何日も山をさまよい、やっとこちらへ辿りついたのです。」
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