十五の石の物語
「…そうだったの…
あの時のあなたはとても弱りきっていたけれども、身体よりも心になにか大きな悩みがあるんだということはすぐにわかったわ…
…だけど、まさかこんな事情があったなんて…
……大変だったわね…」

マリアはジネットの身体を強く抱きしめた。



「マリアさん…」

ジネットの瞳から大粒の涙がこぼれた。



「マリアさん…
すべてあなたのおかげですわ。
あなたは見ず知らずの私を助けて下さって、ここに置いて下さった。
そのおかげで私は助かったのです。
あのままだったら私は…自分の使命に押し潰されて父の元へ逝ってしまっていたかもしれません…」

「馬鹿なことを言うもんじゃないわ。
ジネット……あなた達の種族はとても良い環境で暮らしてきたから、心が美し過ぎるのね…
心がまっすぐで澄みきっているといろんなことですぐに傷ついてしまうことが多いのよね…
特にこの人間の世界にはあなた達には考えもつかないような悪い心を持った人達がたくさんいるわ。
そのために辛い事や悲しい事もたくさんあるわ。
でも、そういう人ばかりじゃないの。
人を思いやる気持ちを持った人達もたくさんいるのよ。
ヴェールさん達もそういう人達だと思うわ。
そして人間は、自分が辛い思いをすることで強くなれるし、他の人の痛みをわかるようにもなれるのよ。
人間はあなた達のように美しい心を持っていないかもしれないけど、そうなれる可能性を秘めた種族だと思うの…
だから、逆にあなたもきっと強くなれる。
こんな苦労を乗り越えられたあなただもの。
もっともっと強くなれるわ!」

「マリアさん…!」

ジネットは感極まった声で、マリアの名を呼んだ。

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