十五の石の物語




ピェールの店まではそれなりに遠かったが、ロアンヌの地図のおかげで迷うことはなかった。
さほど大きくない古めかしい店で、中がごちゃごちゃしているのが店の入り口からも見てとれる。
通路にもがらくたにも見える奇妙なもの達が所狭しと並べられていた。

足元に気を付けながら、私がきょろきょろと店内を見回していると、店の奥から背の低い老人が現れた。



「何か探しものかい?」

ずり下がった眼鏡の奥から小さな目が私をみつめていた。



「あの、実は……」

「ほほぅ…!」

私が話す前に、今朝のロアンヌと同じように老人は私の手を取り、その指輪を見つめた。



「強き力を持った石じゃな」

「……実はこの石のことでお訊きしたいことがあって伺ったのです。」



私は早速先日の老人のことを話した。
ピェールは腕組みをし、目を閉じて考えこんでいたが、やはりそんな老人に心当たりはないと言う。



「考えてもみなされ。
元締めも知らない、そんな市場の端っこに店を出す奴がまともな奴であるはずがない。
もしかしたら、盗品を売っていたのではあるまいか?」

「ならば、なぜ、代金を受け取らぬのです?
そういう輩なら、法外な値段を請求してくるのではないでしょうか?」

「……それもそうじゃな…」

ピェールは、小さく何度も頷いた。
残念ながら、ピェールからも老人の手掛かりは得られず、私は少なからず落胆した。



(……ここもだめとなると、次はどこを探せば良いと言うのか…?!)

焦りと悔しさと怒りのようなものが、私の心の中を満たした。

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