十五の石の物語
「ヴェールのおじいちゃんも、ヴェールが訪ねて行ったらきっと喜ぶだろうね!」

「おじいちゃん…ですか?」

両親が亡くなってから、ヴェールは自分がひとりぼっちだと思っていた
だが、同じ種族の者がいて…そして、血を分けた肉親がいた。
ヴェールは、サリーの言葉でようやくそのことを思い出したかのように、ぼんやりとした視線で遠くをみつめた。



「フランツさん、森の民がみつかったら必ずご連絡します!
必ず、みつけてみせますから!」

「楽しみにしとるからな!
ところで、これからどうするんじゃね?
町からもっと南に下れば大きな町に出る。
じゃが、ここからさらに山の奥に入れば深い深い森がある。
森の民じゃから、森の方を探すのが良いのか、それとも大きな町で手がかりを探すのが良いのか…
難しい所じゃの。」

「ヴェール、どう思う?」

私だけでは決められない。私はヴェールに意見を求めた。



「気持ち的には…やはり、森…の方でしょうか?」

「あたしもそう思うよ!」

「フランツさん、その森はどんな森なのでしょうか?」

「詳しいことはわからんのじゃ。
わしも好奇心で途中までは行ってみたことがあるんじゃが、なにせ行けども行けども深い森でな。
あの森には妖精とか魔物とか、そんな不思議な者でも棲んどるんじゃないかと思うような森なんじゃ。」

「そんな所だったら、森の民がいても不思議じゃないよね!
絶対そっちに行った方良いと思うよ!」



意見はすんなりとまとまり、私達は森の方へ行くことに決まった。

フランツは食料だといって畑で採れたたくさんの野菜や山羊の乳で作ったチーズ等を持たせてくれた。



「気を付けてな〜!」

「おじいさんも元気でね〜!」

私達は山奥の深い森を目指して歩き出した。
森の民の行き先についてはまだ何も解ってはいないが、私達の決意は今までとは違った強いものになっていた。



***

必ずみつける…!

森の民をみつけることは、自分自身をみつけることだ!……ヴェールの胸に揺るぎない決意が宿る。

赤く染まった空は、彼らの旅が晴れやかなものだと暗示しているようだった。



十字石〜Fin

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