十五の石の物語
「ピェール、いるかい!?」

唐突に、若い女の声が店に響いた。
その陽気すぎる声色から、少し酔っていることが窺えた。



「おぉ、サリーか。」

「どうしたのさ、真面目な顔して……」

「それがじゃな、この人が……おぉ、そうじゃ!!」

ピェールの顔が俄に明るく輝いた。



「お客さん、あんたは運がええ。
サリーにみてもらおう!」

(……ミテモラウ??)

老人は何をしようというのか…
私はその言葉に何かいやなものを感じた。



「なにさ、ピェール……この人、誰??」

「この人はな、人を探してるそうなんじゃ。」

サリーにそう答えたピェールは、今度は私の方に向き直った。



「このサリーはな。こう見えてもすご腕の占い師なんじゃよ!」

(……ウラナイだと…?!)

私は占いをまるで信じていないというわけではなかったが、占いなんてものは、女、子供の娯楽のようなものだという想いが強かった。



(ピェールは、私のことを馬鹿にしているのだろうか?
確かに、何のあてもなく老人を探しに出て来た私は愚か者かもしれないが、占いで探すだなんてあまりにも馬鹿にしすぎだ…
仮にも私はあの老人を真剣に探している。
なのに、こんなに若い酔っ払いの小娘に占ってもらおうだなんて……!)

私が機嫌を悪くしたことを二人はすぐに気付いたようだった。



「こんな小娘の占い等、信じられるかといった顔つきじゃな。
ならば、信じんでもええ。
遊びじゃと思えば良いんじゃよ。
どうせ、他に手がかりはないのじゃろう?」

老人の「どうせ」という言葉がさらに私の癇に障った。

サリーと呼ばれる若い女も、私に信じてもらえないとわかったことで、やはり機嫌を悪くしていた。

ピェールはサリーの機嫌をとりなして奥の椅子に座らせたかと思うと、今度は私の背中を押し、否応なしにサリーの前に向かいあわせに座らせた。
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