十五の石の物語




「おはよう!」

「おはようございます。フランツさん。
昨夜はずいぶん遅かったのですね。
いつ戻られたのか全く気付きませんでした。」

「いや~、昨夜は楽しかったぞ。
気がついたら空が明るくなっとった。
しかし、サリーさんもなかなかの酒豪じゃのう、まぁ、わしには負けるがな。」

朝まで飲んでいたとは思えない程、フランツはすっきりした顔をしている。
だが、ヴェールやジネットが起きて来ても、やはりサリーだけは起きてこなかった。



「どれ、わしが起こして来るとしよう。」



フランツに連れられ、不機嫌な顔のサリーがようやく姿を現した。
そんなサリーも朝食を食べているうちに、だんだんといつもの元気を取り戻した。



「本当に、こんなに酒の強い爺さんは初めてだよ!」

「ははははは…!
若い時はもっと強かったんじゃが、これでも弱くなったんじゃよ。」

「酒場の酒、全部飲むんじゃないかと思って心配したよ。」

「まさか。いくらわしでもそこまでは飲まん!
そんなことをしたら、ここの人達に恨まれるからな。」

フランツは自分で言った冗談にまた笑った。



「楽しい夜になって良かったじゃないか。」

「あれ?たくさん飲んだって言ってるのに怒らないのかい?」

「たまになら良いのだ。
それに、昨夜はフランツさんがいて下さったしな。」

「でも、ただ飲んでただけじゃないんだ。
ちゃんと話も聞いてきたんだよ。
まず、蛍石は夜は光らない。
夜光る蛍石を見たなんて人は一人もいないってさ。
それから、この先に不思議な石が採れるって噂の鉱山があるんだって。」

「不思議な石?」

「それが、たいして高価な石ではない上にへんぴな所にあるらしくって、なんとかいう人が一人で掘ってるらしいのさ。
…えーっと…なんて人だっけ?」

サリーは、頭を抱えながら、フランツに答えを求めた。
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