十五の石の物語




「ヴェール、ジネットと話す時は気を付けないとヤバイよ!
さっきはひやっとしたよ。」

「すみません。気を付けます。
やっぱりああいう話はしない方が良いですよね。」

「私達もこれからは気を付けないといけないな。
ジネットさんがいる時は極力注意しなくてはな…」

「やっぱりジネットは連れて来ない方が良かったんじゃない?
なんだか、煩わしいよ。」

「これからは気を付けますから……」

サリーの言葉にヴェールが、一瞬、不機嫌な顔をしたことに私は気付いた。




(自分の正体がバレるかもしれないというのに、それでもジネットと同行したがるとは……ヴェールはジネットへの想いがまだ断ち切れていないのだろうか?
ネリーのことを好きになる方が彼にとってはきっと良い結果になると思うのだが……)


しかし、心というものは複雑なもの。
特に、恋心はそういうものだ。
損得や良い悪いで、決められるものではない。
私は、それ以上、ヴェールの恋心について考えるのはやめた。



地図は現実のものとはかなり違っていた。
思わぬ所に沢があったり、道とされている場所もそもそも人が歩くような道ではないのだ。
けもの道のような道なき道をずっと歩き続け、手足を植物に傷付けられながら、私達は少しずつ進んで行った。



「ねぇ、ヴェール、本当にこっちであってるんだよね?」

「地図によるとこちらに間違いないのですが…」

「しかし、地図とここの様子はずいぶんと違う……つまり、その地図がそもそも間違っているとしたら、辿り着けない可能性もなきにしもあらずだな。」

「え〜〜っ!じゃ、苦労してここまで来たのは無駄足だったってことかい?
ちっくしょう!やっぱり、よっぱらいの書いた地図なんて信用するんじゃなかったよ!」

「まだ、そうと決まったわけではないが……思ったより時間はかかるかもしれないな。」

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