十五の石の物語
「もうすぐですよ。」

ヴェールの言った通り、私達はようやく拓けた場所に辿り着いた。
私達は、倒れるように大きな木の根元に腰を降ろす。

とにかく疲れ果てていたため、その晩はヴェールが採ってきた実を食べるだけで済ませることにした。



「水で飲んでしまえば大丈夫ですよ。」

「最初からそう言ってよね!」

「この実はものすごく酸っぱいのだな?」

「その通りです。
ですから噛まずに飲まれた方が良いですよ。」

「わかった。」



私は子供の頃から酸っぱいものが大の苦手だった。
「酸っぱい」と聞いただけで汗が出てくる程だ。
しかし、それ以上に私の好奇心が勝った。



(「ものすごく」とは一体どの程度のものなのだろう…?)


私は二人の静かな寝息を聞きながら、木の実を一つ手に取り、ほんの少しかじってみた。



「うっ…」

それは予想を遥かに超える酸っぱさだった。
すぐにむせて激しく咳が出た。
私は、口を塞ぎながら、二人の様子を窺った。
二人はすでにぐっすりと眠っているようで、私の咳にも目を覚まさなかった。



(……良かった…)

実をかじったことを後悔しながら、私も眠りに就いた。







次の朝…
私達はいつもより少し遅い時間に目を覚ました。



「おなか減ったね~!」

サリーもすっかり体力を回復していた。
昨夜のあの木の実は,思った以上に効果があるようだ。
私も実際、疲れをあまり感じない。
軽く朝食をすませ、私達はいつものようにヴェールを先頭に歩き出した。



「レヴさん、多分あの山だと思うのです。
ただ、山のどこに採掘場の入り口があるのかは記されていません。
地図を書いてくれた人もきっとはっきりとは知らないのでしょう。
あの山もすぐ近くに見えますが、一旦降りてからまた登らなくてはなりませんから、時間はかかりそうですよ。」

「そうか…
あの山に着いてからも採掘場所を探さなければならないのだからな。
これは三~四日ではとても帰れそうにないな…」

「そのようですね…」

私が気になっていたのはジネットのことだが、ヴェールもきっと同じ気持ちだったと思う。

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